2019.03.07 Art Fair

日本洋画の相貌展 – ART FAIR TOKYO 2019 –

初めて幕末の日本で油絵というものが描かれるようになってから、おおよそ150年が経ちました。ヨーロッパの絵画の歴史に比べれば、その歴史はまだ浅いものです。それでも日本人画家は、西洋諸国に並ぶ技術力を求め、油絵という分野を積極的に吸収し、新しい表現への探求を続けてきました。

大正が始まった1920年代、日本人画家たちはこぞって芸術の都パリへ留学し、当時は数百人がパリの街にいたと言います。また、日本に戻った画家たちは個人の作品の発表の場を求め、新しい運動を起こします。 1930年代には思想的な対立のもと、芸術と社会、政治が表裏一体となった複雑な時代となり、より個性的な作品が発表されました。統制、抑圧された戦時中を経て、戦後はフランスやニューヨークなどで同時多発的に抽象画が描かれ、日本でも1950年代後半に抽象画ブームが巻き起こり、多くの抽象画が描かれるようになりました。

今回は、アートフェア東京において「日本洋画の相貌展」と題し、抽象画・具象画を問わず日本の近代洋画史に確固たる個性を輝かせた作家たちの作品を紹介致します。 わずか150年足らずの歴史の中で、近代洋画は海外から密接に影響を受け、脂派や外光派、政治と画壇、抽象、具象と、その時々の勢力や風潮という避けられない事象の中で葛藤し、日本人としての国民性を根底に滾らせながら、生み出されて行きました。 しかしながら、鑑賞する側の私たちは、抽象画という概念が登場して以来、より無意識のうちに絵画をその属性に分けて鑑賞するという作品の表面的形式にとらわれて、本質的な作品の良さを見落としつつあるように思います。 現代はそういった背景はあくまで歴史として受け止め、それ以上にそれぞれの表現の中に、より本質的なものを求めて作品を楽しむ時代ではないでしょうか。

坂本繁二郎は「絵画は総て抽象である」と語り、山口長男は「自分の絵は具象である」と言葉を残しています。その言葉通り、坂本繁二郎の描く美しい色合いの世界は抽象画のような世界観を放ち、山口長男の抽象画は仏像の微笑みのような穏やかな具象性を持っています。 そこに共通するものは描くことへの追求の精神的昇華であり、作家の内面に潜む人間的な奥深さと、根源的な日本人としての美の感性です。

先人の残した作品を広い視野で楽しめることが現代の特権であり、何よりの贅沢だと思います。近代洋画家たちが残した作品群を、是非ともお楽しみ頂ければ幸いです。何卒ご高覧いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

ご紹介している作品には既に売約済みのものもございます。悪しからずご了承ください。
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ART FAIR TOKYO 2019

会場:東京国際フォーラム ホールE ブースG-63
会期:2019年3月7日(木) – 10日(日)
開場時間:3月 7日(木)完全ご招待日 14:00〜20:00
3月 8日(金)11:00〜20:00
3月 9日(土)11:00〜20:00
3月10日(日)11:00〜17:00
展示予定作家:岡田三郎助 / 坂本繁二郎 / 須田国太郎 / 長谷川利行 / 里見勝蔵 / 山口長男 / 猪熊弦一郎 / 難波田龍起 / 山口薫 / 津高和一