1982年、山口華楊先生はパリのチェルヌスキ美術館で近代日本画家では初めてであろう大規模な展覧会を行いました。日本画というものがパリにてどう評価されるのか、それは大変な役目だったに違いありません。展覧会は大盛況、会期は延長され図録は増刷されました。華楊先生は『現代の偉大な動物画家』として大変な賞賛を受け、高尚な精神に裏付けされた、華楊先生の求め続けた美は、国境を問わず万人の心に響くという証明ともなりました。

円山応挙以来、京都画壇において動物を描くことは特別な意味を持つことのように思います。そしてそれは、かの偉大な南宋画への憧憬であることも必然であリましょう。描かれた動物は神格化され、また命の喜びを謳い、時代を経て人間にとって身近な存在へと変容してゆく。華楊先生は、そんな動物画の流れから自分の描くべきものを見出し、「花でも動物でもその中の生きた生命を見出したい。借り物ではなく、自分の眼でみた、生きた気持ちを出したい。私が念願しているのはそのことだけだ」と残しています。

山口華楊は13歳で西村五雲塾（のちの晨鳥社）に入門。五雲亡き後は、塾を引き継ぎ多くの塾生の指導にもあたりました。

晨鳥社で学んだ竹内浩一先生も師・山口華楊の背中を見てきた一人です。絵画の道に進むことを決め、1966年に晨鳥社へ入塾しました。２人の画家は晨鳥社という伝統的な画塾によって結びつきます。竹内先生もまた、華楊先生の流れをくむ、同じく現代の偉大な動物画家でありますが、師とはまた違う趣きを持っています。その作品は詩情的で繊細さに溢れ、動物という無垢で純真な「生命」そのものを描いています。しかし、それに止まることなく、その動物たちに人間のもつ悲哀や喜びを投影させているようにも見え、人間の「生きる」ということへの求道の精神を絵画上に表現しているようにも思えます。

本展覧会は、山口華楊先生と永善堂のご縁・山口華楊先生と竹内先生のご縁・そして、竹内先生と永善堂のご縁を形にしたいと、各所・先生方に僭越ながら企画をさせて頂きました。

今もなお輝き続ける山口華楊の芸術と、自己との対峙を作品へ昇華させ続けている竹内先生の芸術・師弟の美の世界を本展覧会でご堪能頂ければ幸いです。

どうぞご高覧のほど宜しくお願い申し上げます。