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作品紹介

津高 和一Waichi Tsudaka

(無題)No title
27.5 × 22.0 cm
キャンバス・油彩

1987年作
oil on canvas
painted in 1987

戦後の抽象絵画を牽引した画家の一人に津高和一がいる。
1911年、兵庫県に生まれ、国内外の多くの美術展に出品し、日本を代表する美術評論家の今泉篤男に高い評価を受けていた。1995年に阪神淡路大震災で自宅が倒壊し、83歳で被災死した。
津高は16歳の時より詩人として活動していた。
詩誌「神戸詩人」の同人でもあったが、特高警察にコミュニストの集まりと疑われ検挙され、行き場のない生活を経験したことが抽象絵画の原点を培ったという。
詩を諦め、25歳から中之島洋画研究所にて絵画を学び画家に転向した。
初期は具象絵画を描いていたが、1952年には完全に絵画が抽象化し、以降は一貫して抽象表現を追求する。
戦後、関西の現代美術において頭角を現していた「具体美術」が、物質主義的、即物的な傾向を強めていたのに対し、
津高はその動向と一線を画し孤立を保っていた。
それは、津高が求める絵画が内面的な精神の表現に重きを置いていたからであろう。
「非常にぎこちない、あるいは、下手くそな生き方こそ、やはり何か物事の真髄への繋がりを持つ可能性を秘めていると思う。
(略)
僕がそのようにして体得したもの、体で覚えたものが、頭で覚えたものよりもはるかに強靭で強いものを僕の中に残してくれたと思います。
(略)
そういうものが、僕に抽象表現をさせる。つまり、見えないものを見えるものにしたいと思わせたのだと言える」
津高はこう述べている。
戦後、同時多発的に生まれた抽象表現は、戦時下に人間自身が巻き起こした惨劇と、不条理の中で抑圧された精神が芸術として発された人間的必然であった。津高が抽象表現を選択したこともまた、同じく必然であったのだろう。
本作は、白と黒の単色によって大胆に構成されている。
そこには、どこか大らかさが漂う。そして見る側に威圧感を与えることは決してなく、故意の奇抜さもない。
素直にその世界に引き込むような力を発している。 津高の作品は、画家自身が内面を語る方法として抽象化表現がなされている。
絵画には語りかけがあるという。話しかけてきたら、何か感じるものがある。
視覚で捉えるのではなく、心で受け止める。作品を見る我々には正解は示されないのだ。
ただそれでいいのである。いい絵画にはその力があるのだ。
津高の絵はまさしくそうであろう。