作品紹介

生命の喜びを謳う(山口華楊先生)

山口華楊・蕗

青々と美しく生命力に満ちた豊かな蕗が、ところ狭しと葉を広げ、手前には一匹の黒揚羽が何かに導かれるようにふわりと舞っている。

深みがありながらも瑞々しく、鮮やかで美しい色が画面いっぱいに広がる。その光景はまさに生命の喜びを謳うかのように煌めいている。また、その前を舞う蝶の存在が情緒を誘い、初夏の風情を感じさせる空気感を見事に表現している。まさに一瞬の美しさを捉え尽くしたと言っても過言ではない。

おそらく山口華楊はこの情景に実際に出逢い、そこに繰り広げられた生命の美を感じたのであろう。 『動物に限らず、大切なことは対象に心が触れ合った瞬間の発見』『同じ生き物同士、こちらと対象の気持ちがピタッと一致して霊感のようなものを感じた時、ひとつの絵になる要素ができる。この霊感と写生と構想とで絵になるのである』と残している。

生きているもののみが持つ生命感や、生命の美を求めた山口華楊。本作は一九七〇年六月、華楊七十歳・晨鳥社展への出品作である。同じ年の四月、師である西村五雲の遺作素描展が行われ、その開催のために華楊は尽力していた。

蝶は、亡くなった人の霊魂が宿るとも言われている。自身も年を重ね、さらに画業に励む中、どこかで師の面影を求め、想いを募らせて描いたのかもしれない。

(た)

*東美アートフェア・画廊にて展示いたします。

*作品の詳細はお問い合わせください

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山口華楊

『蕗』

65.5×92.2cm

1970年作

紙本・彩色・共シール

東京美術倶楽部鑑定証書付

 

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