作品紹介

S少女 (松本竣介 / S少女のデッサン)

S少女のデッサンである。亡くなる2年前に描かれた。

この作品には全く同じ表情とポーズをとった油彩画が存在し、その作品は岩手県立美術館の所蔵となっている。

(現在、岩手県立美術館で展示中のようです)

松本竣介は、作品の制作をする時に計画的な過程を踏んでいた。それは展覧会や書物に通じて触れていた古典的な絵画と技法に影響を受けていたと思われる。1940年以降は、カルトンを使用して作品を残している。カルトンは、入念な計画を必要とするフレスコ画やテンペラなどルネサンス期に発達した手法で、ハトロン紙にかかれた素描の裏面を木炭で塗りつぶし、キャンバスは板の表面にあててカーボン紙のように図を転写するための実物下絵である。竣介は多くスケッチを描き、気に入ったものをデッサンやエスキースとして描き、それを転写するためのカルトンを作っていた。

そのことからもわかるように、竣介は油絵やデッサン、スケッチにも大きな意味を持たせていた。はじめに描かれたスケッチがペン画になり、タブローにまでなる一貫性は、論理的に思考し制作していたことがよく伺える。自作のスケッチ帖は、「TE ASI」「KODOMO」「ONNA」といったように種類を分けて描写が刻まれている。「ONNA」には、自筆で「線の整理」と書かれている。竣介は線の描写を追求していくのに竣介にとっては女性像が適材であったのであろう。

 

本作も線となり現れた素早い竣介の筆致がよく見て取れる。しかしながら、硬さは微塵もない。描いた女性達は特別に匿名性があるわけでなく、描いた女性像が男性像になることもあった。このS少女も竣介によって咀嚼され、竣介が醸し出す独特の柔らかで愛らしい人物となっている。右下には竣介のサインと日付が入っている。一つの作品として、大事に思っていた証拠であろう。それはペン画も油彩も同じことである。

 

(た)

*アートフェア東京2018に出品します

*作品の価格・詳細はお問い合わせください

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松本 竣介

『S少女のデッサン』

26.9×18.2cm

紙・インク 1946年作

松本竣介素描集(綜合工房)掲載