作品紹介

美しき女性像 (舟越保武・聖セシリア)

舟越保武は日本を代表する彫刻家である。松本竣介を紹介する上で欠かすことのできない人物のため、彫刻家であるが今回はデッサンを紹介することにした。

松本竣介とは、岩手県立盛岡中学校で同級生であった。高村光太郎訳の「ロダンの言葉」に感銘を受け、彫刻家を志すことになる。

先に上京した竣介と再び出会うのは21歳の時。東京美術学校の彫刻科へ進学する。よく喫茶店に通い芸術のことを互いに語り合ったという。舟越は竣介のことを「あんなきれいな人間が(美男という意味ではない)この世にいたことが今もって私には不思議に思えてならない」と語っている。

「純真な心が人心にそのまま伝わる濁りのない顔を竣介は持っていた」とも残す。生涯の友をそう語る舟越自身も純真な心を持っていたに違いない。

1948年に竣介が亡くなり、1950年に生まれた長男をすぐに亡くした舟越は、洗礼を受けてカトリック教徒になる。それ以降、キリスト教を主題とした作品を発表することが多くなっていく。

代表作である、「長崎26殉教者記念像」は、1597年豊臣秀吉の命により26人のキリスト教徒が処刑された場所に建てられたモニュメントである。1862年に彼ら26人はカトリックの聖人に列せられた。それから100年後の1962年に長崎26殉教者記念像は舟越の手によって完成した。当初、舟越が求められたのは殉教者たちが槍で突かれ死んでいく苦行の様であったが、舟越が作り上げたのは、厚い信仰を持つ清らかで誠実な姿と安らかに天に導かれていく美しい様子であった。

本作の聖セシリアも、カトリック教の聖人である。ローマによって迫害された殉教者たちを手厚く葬っていたことを罪に問われ、信仰を捨てるよう命じられるも、それを拒否して処刑され非業の死を遂げる。

セシリアは、常に心のうちで音楽を神に捧げていたと言われることから、音楽の守護聖人とも言われる。その心美しき聖人の彫刻も舟越は作っている。

清らかで柔らかな微笑みを浮かべるその美しい像は舟越自身の心を反映し、救いを受けているようにも思える。本作もまさに、それが見てとれる。美しい聖セシリアの姿を捉えた貴重なデッサンである。

(た)

*アートフェア東京2018に出品します

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舟越保武

『聖セシリア』

51.0×36.0cm

紙・鉛筆