作品紹介

「青」の正体( 難波田龍起 / 青の形象)

この作品を写真で捉えることは非常に大変であった。幾重にも重ねられた色相が光を受けると微妙な色の変化を起こすからだ。まさに掴みたい色が逃げていく。そんな印象であった。

明治近代絵画は黒田清輝のフランス留学以降、不透明絵具による技法が主流となっていった。ある色を表現するのに不透明絵具を一度塗りすることで表現ができる方法である。西洋の印象派以降がその技法を主流とし好んで用いていた。それ以前に主流とされていた技法は、グレーズ技法といい、下層の不透明な塗りと上層の透明な塗りを組み合わせて、重層的に色を表現する描き方であった。透明な絵具の塗り重ねなので、全体的に透明感がありながらも重ねた分の深みがある。日本近代洋画では、須田国太郎、松本竣介らわずかにその技法が見られる。そして難波田龍起もその技法を用いた。彼らは誰に習うでもなく、独学で西洋の古典技法を学び、自ら古典回帰を求めて行った画家たちであった。そしてその先に日本の洋画の存在を求めていたのだ。

本作『青の形象』は難波田龍起91歳の時の作品である。画面いっぱいに広がる青は、単色ではなく、幾重にも色を重ね表現した青である。画面中央で渦巻くような、深い色はその時々によって画面内を移動しているかのようである。青という色がもつ性格や世界があるとしたら、難波田はそれを表現したかったのかもしれない。晩年は50年代、60年代に見られた激しい線の動きや厳しさから離れ、深い一つの世界にのめり込んでいくような作品が多い。修行僧の極致のようである。

難波田の表現する青は凄みを孕みながらも、品のある美しさを持つ。

 

(た)

*アートフェア東京2018に出品します

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難波田龍起

『青の形象』

27.3×21.9cm (3号)

ボードキャンバス・油彩

1996年作