作品紹介

小さい画面に宿るリアリズム(須田国太郎)

須田国太郎は近代洋画界では異色の人物である。

22歳の時に京都帝国大学に進み、美術学史を専攻する。『写実主義』と題をとった卒業論文を書き、そのまま大学院に進んで『絵画の理論と技巧』の研究をした。

28歳の時には、大学院を退学し渡欧。須田にとっての絵画修行とは、文献と実物の作品による美術史研究であった。そして留学先には、当時の流行の先端であったフランスではなく、スペインを選ぶ。

以後、4年間スペインの地に居を構え、プラド美術館に日参した。ヴェネチア派の絵画の色彩がバロック時代に入って明暗の重視によって失われたこと、印象派が光線の色彩を豊かに表現したこと。油絵の発展過程を自身の目で確かめ、模写をし実際に試してみることで、単なる西欧の模倣ではなく日本人として自身の表現すべき油絵を作り上げていった。それは須田が『切花的芸術』として批判した近代洋画への問いかけであり、西欧で描かれてきた絵画が、どういう経路を辿って画面の形成に至ったか、外面だけでなく内面を知ることを最も重要視した須田の作風は、明らかに当時の日本では難解な複雑さを持っていた。

本作は『花とかみきり』という作品である。使われたガランスの色彩が引き立つ薔薇の花が一輪と、その脇に背中に斑点を背負った黒光りのカミキリムシが木に止まっている。須田の作品の明暗は、グレコやゴヤに大きな影響を受けている。暗い色調の中でも、艶やかさがある。須田絵画の持つ、重みと独特の雰囲気は小さい画面ながらもよく伝わってくる。

西洋の古典に日本のあるべき油絵の姿を求めた須田国太郎。晩年はその研究熱心さと博学さを買われ、教壇に立つことも多く審査員の依頼も多く受けた。

多忙の合間を縫うように制作をし、色彩については生涯悩み続け、スペインへの再訪を願っていたという。願い叶わず70歳でこの世を去るが、スペインへの再訪を果たせたら、須田はまたどんな作品を残したのだろう。

(た)

*アートフェア東京2018に出品します

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須田国太郎

『花とかみきり』

12.2×16.0cm

板にキャンバス貼り付け・油彩